日本地熱学会誌
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短報
松之山温泉バイナリー発電試験地域周辺の温泉化学モニタリングについて
柳澤 教雄佐々木 宗建杉田 創佐藤 真丈大里 和己
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2015 年 37 巻 3 号 p. 87-94

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抄録

新潟県松之山地域において温泉バイナリー試験が行われている。この地域はジオプレッシャー型の構造を示し,温泉流体は高温でCl濃度が9,000mg/lの高塩濃度でメタンガスに富む傾向にある。そして鷹の湯3号井の約97℃の温泉水を用いた発電試験にあわせて,2010年10月より鷹の湯3号井および周辺の源泉のモニタリングが行われた。発電試験のために使用した温泉水量の変化にかかわらず,モニタリング井(Well-3)の生産流量に大きな変化が認められなかった。また,2014年2月までのEC,pH,温度や各成分の変動係数は,0.01~0.06程度を示しておりおおむね安定しているが,すべての井戸でのHCO3や鷹ノ湯3号井のSi濃度,Well-3のCa濃度は0.1以上の変動係数を示した。この変動要因は,2011年3月12日に松之山温泉付近で発生した長野県南部地震と考えられ,Well-3ではその前後で,Ca濃度は100mg/lから200mg/lへ,HCO3濃度が320mg/lから240mg/lに急変する現象が認められた。 また,1937年や1964年の分析記録のあるWell-1では,長期間にわたりNaやClなどの濃度が安定していることが示された。

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© 2015 日本地熱学会
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