化学工学論文集
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[特集]地球環境とリサイクル
溶融塩電解と合金隔膜を用いた希土類金属の分離回収プロセス
大石 哲雄小西 宏和野平 俊之田中 幹也碓井 建夫
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2010 年 36 巻 4 号 p. 299-303

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抄録

廃棄物から希土類金属を分離・回収する新プロセスを提案した.これは,溶融塩電解と合金隔膜を用いたプロセスであり,ここで合金隔膜はバイポーラー電極として作用し,次のような機構により希土類イオンを選択的に透過させる.(a)廃棄物のアノード溶解または低品位の希土類化合物を添加することで,陽極室内に希土類イオンを形成する,(b)合金隔膜の陽極室側表面において希土類イオンを還元して合金化する,(c)希土類金属が合金内を拡散し,隔膜の陰極室側表面で酸化され,イオンとして陰極室内に溶解する,(d)陰極室に溶解した希土類イオンは陰極で希土類金属または合金として回収される.固体合金内の金属拡散は遅いため,通常はこれを分離プロセスに応用することは困難であるが,溶融塩電解においては特定の希土類合金がきわめて高速で形成することが報告されており,本プロセスではこの現象を応用している.期待される特長として,鉄族元素等の不純物と希土類金属との高精度な分離が可能であること,各希土類金属に対する選択性を電解条件によって比較的自由に制御できることなどが挙げられる.そこで,予察的な実験としてNi薄膜で作成した容器に共融組成のLiCl–KCl溶融塩を入れ,この容器底部を別の溶融LiCl–KClに浸漬し,容器内側を陽極室,外側の浴を陰極室として使用した.まず,陽極室にDyCl3を添加して定電位電解によりNi容器をDyと合金化した.次いで陽極室にNdCl3を添加し,陽極室中の炭素電極を陽極,陰極室中のAl板電極を陰極として所定の電流を流した.陰極室中のDyおよびNdの物質量を測定した結果,DyおよびNdが上記の機構によって陽極室から陰極室に拡散透過したことが示された.続いて,合金化する際の選択性を確認するため,溶融LiCl–KClにDyCl3とLaCl3を添加した系,およびこれにFeCl2を添加した系においてNi板電極を定電位電解した.その結果,いずれの場合もDyNi2が選択的に形成していたことから,本プロセスではDyをLaやFeから分離できる可能性が高いことが示された.

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© 2010 公益社団法人 化学工学会
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