化学工学論文集
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熱工学
吸収液/吸着剤スラリーによる吸収式ヒートポンプ性能向上効果
板谷 義紀市橋 伸久小林 信介
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2010 年 36 巻 5 号 p. 505-511

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抄録

臭化リチウム/水系吸収式ヒートポンプの性能向上を目指して,吸収液に吸着剤微粒子を分散するスラリー化方式を提案した.LiBr水溶液に吸着剤を分散させたとき,吸収器および再生器内で伝熱面上をスラリーが液膜として流下する場合を想定して,熱・物質同時移動解析を行い,ヒートポンプ性能に与える吸着剤分散効果を検討した.吸収器と再生器それぞれを個別に解析するオープン系解析では,吸収液温度が吸収器入口直後で著しく昇温して水蒸気吸収に比べて伝熱が律速されることと,吸着剤を分散した吸収液スラリーのLiBr濃度が吸収液単独に比べ吸収器内では高濃度,再生器内では低濃度で伝熱面を流下することを確認した.吸収器と再生器を吸収液が閉ループで循環する閉ループ系解析では,熱源に360 Kの比較的低温度排熱を用い,冷却水温度290 Kとしたとき,280 Kの冷熱生成出力が,吸収液単独の場合に比べて条件によっては10%増大する結果が得られた.以上の結果より,吸着剤に吸着されたLiBrが吸収器内で水蒸気吸収に伴い脱着されて,吸収液濃度の低下を抑制するバッファー効果として作用することで,吸収性能が向上することを明らかにした.さらに,吸着剤の一例として100 μmアンダーの活性炭微粒子をLiBr水溶液に分散させた場合,平衡吸着量は溶液濃度にほぼ比例し,吸着平衡パラメーターは温度にほとんど依存せず1.5程度となり,解析で用いた値が妥当であることを確認した.

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© 2010 公益社団法人 化学工学会
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