高分子論文集
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高分子鎖の直接電子顕微鏡観察
椎橋 透広瀬 和正田形 信雄
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1989 年 46 巻 8 号 p. 473-479

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抄録

溶液中で広がっているポリマーをそのままの状態で固定できれば, 分子の大きさと形態, ゲルや橋かけゴムの網目構造を直接的に透過型電子顕微鏡 (TEM) で観察することができると考え, ポリイソプレン (IR) 試料をスチレンモノマーで溶解・膨潤後にスチレンを重合して固定した. 網目鎖平均分子量 (Mc) が既知の4種類のIR橋かけ物についてこの方法で調製しOsO4で染色後にTEM観察した結果, ミクロ相分離した網目構造が観察された. 観察された網目の単位胞の平均のサイズは, 分子量Mcを有するポリマーの非摂動状態の末端間距離に比較的よく一致した. TEM写真上の網目部分の長さを多数計測することにより, 相対的な網日鎖長の分布曲線を得ることが可能であることを示した. IRのゾル分子の場合のTEM像は球形であり, 球の直径はIRの分子量から計算した非摂動状態の末端間距離に比較的よく一致した. しかし1分子を観察したものではなく, 10分子程度のIRの凝集体と結論された.

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