2016 年 73 巻 2 号 p. 198-206
銅は空気中で容易に酸化し,表面に酸化物が形成されて電気伝導性を低下させる.本報では,銅の板および微粒子の表面を末端チオール化合物の有機薄膜で被覆することで酸化耐性の付与およびこれに伴う電気伝導性への影響について検討を行った.銅は酸化膜を除去し,末端チオールポリスチレン(PSt-SH)の溶液に浸漬して有機薄膜で被覆した.XPS測定よりPSt-SHで被覆すると銅へ酸化耐性の付与が可能であることがわかった.また,低分子化合物である1-ドデカンチオール(Dod-SH)と比較したところ,高分子のPSt-SHの方が酸化耐性が高く150°Cに加熱でも酸化しなかった.このことは銅の外観の色変化とも対応した.四端子法による接触電気抵抗の測定から,室温ではPSt-SHおよびDod-SHで被覆した銅はともに接触電気抵抗の増加は認められず,一方150°Cの高温では高分子のPSt-SHのみ電気伝導性が保持された.