2008 年 65 巻 3 号 p. 235-241
本研究は熱板溶着した PP における溶着界面部の微細構造,溶着強度に及ぼす溶着条件の影響について検討し,高い溶着強度が得られる溶着条件を明らかにした.その結果は次の通りである.(1)溶着体の界面構造は高い配向性を有する流動層およびこの流動層の間に挟んでいる溶融樹脂の再結晶層からなっている.(2)基本的に高い加熱温度,溶着圧力および比較的に高い押込み速度は健全な溶着界面が得られやすいので,溶着強度の向上に有利である.(3)高い溶着強度が得られるかどうかは接合する際に両溶融表面の接触による巻き込んでいる気泡などの欠陥を完全に排出することが最も重要である.(4)必要以上に溶融樹脂を排出させると,流動層の配向傾向がかなり強くなるため,配向方向に沿って破壊が生じやすくなる.特に繰返し疲労負荷を受けるとき,き裂がこの結晶配向方向に沿って進展しやすくなり,疲労寿命を低下させるおそれがあると思われる.