高分子論文集
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一般論文
溶融押出によるポリプロピレン/ポリグリコール酸ブレンドにおける相溶化とキャラクタリゼーション
佐藤 浩幸山根 和行穂苅 有希小林 史典来原 なな子市川 幸男大石 好行
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2011 年 68 巻 9 号 p. 631-641

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抄録

ポリプロピレン(PP)の二軸延伸フィルムのガスバリア性を向上させるためには,高分子量ポリグリコール酸(PGA)を溶融ブレンドすることが有効であることを見いだした.PP/PGA ブレンドは非相溶系であるが,その押出シートの酸素透過係数(PO2)は PP 単独のそれより低下した.一方,官能基を有するポリオレフィンを第三成分として加えた PP/PGA ブレンドは相溶性が向上し,その押出シートの二軸延伸性も向上した結果,透明性が良好でガスバリア性が高いフィルムを得ることができた.とくに PP/PGA(80/20 重量比率)に無水マレイン酸変性ポリエチレン(E-g-MAH)を 10 phr 加えたブレンドの押出-二軸延伸フィルムは,PP 単体延伸フィルムに対する PO2 相対値が 0.03, PP 未延伸シートに対しては 0.01 を示した.E-g-MAH を相溶化剤として用いた PP/PGA ブレンド系は,未相溶化ブレンド系と比較して,押出シートにおいて PGA 成分が小粒径ドメインとして均一性高く分散し,二軸延伸フィルムでは PGA 成分が高アスペクト比の層状に分散した状態を示した.
  相溶化剤を用いた PP/PGA ブレンド系の二軸延伸フィルムのモルフォロジー解析により Nielsen 理論を用いて計算した PO2 は実測値とよく一致した.したがってその高ガスバリア性発現機構は PGA の層状分散による透過ガスの迷路効果によると推定した.

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© 2011 公益社団法人 高分子学会
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