高分子論文集
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一般論文
環状ポリエチレンの球晶成長速度から探る高分子の結晶成長に及ぼすトポロジカルな拘束と結び目絡み合いの効果
北原 綱樹山崎 慎一木村 邦生
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2011 年 68 巻 10 号 p. 694-701

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抄録

高分子の結晶成長に及ぼすトポロジカルな拘束と結び目絡み合いの役割を解明するために,分子量の異なる 3 種の環状ポリエチレン(C-PE)と直鎖状ポリエチレン(L-PE)の球晶成長速度 G を過冷却度 ΔT の関数として測定した.C-PE および L-PE 試料は,修飾型および第二世代 Grubbs 触媒を用いて cis-cyclooctene を開環重合して得られるポリマーを水素化することによってそれぞれ調製した.調製した試料の重量平均分子量 Mw は,C-PE が 9300, 43600 および 86500, L-PE が 44000 であった.すべての試料の GG=G0 exp(−BT)の式に従い,球晶成長が表面二次核生成律速過程であることがわかった.C-PE の Mw の増加とともに,log G 対 ΔT−1 のプロットの傾き B が増加することがわかった.B は核の折りたたみ面の表面自由エネルギー σe に比例することから,折りたたみ面の規則性が,Mw の増加とともに向上していることに対応している.換言すると,C-PE の Mw が小さくなるほど,核の折りたたみ面が乱れてくることを意味している.これは,C-PE の Mw が小さくなるほど,環状高分子特有のトポロジカルな拘束が大きくなるためであると考えられた.一方,Mw がほぼ等しい,Mw=43600 の C-PE と Mw=44000 の L-PE の log G 対 ΔT−1 のプロットの傾きはほぼ一致するが,C-PE の G0 は L-PE のそれよりも 1 桁以上小さいことがわかった.C-PE ではトポロジカルな拘束が存在するために,結晶成長における下地結晶面への吸着様式が L-PE とは異なり,C-PE が結び目絡み合いをもたないことによる結晶成長の有利さを解消する以上に C-PE の結晶成長を抑制している可能性が推察された.

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© 2011 公益社団法人 高分子学会
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