1985 年 29 巻 1 号 p. 55-60
ナナホシテントウの餌探索行動が広域型から地域集中型へ切り替わるための刺激と,地域集中型の探索の時間(GUT)の決定要因を検討した。
ナナホシテントウに,a)餌との接触,b)餌の捕獲,c)餌の摂食,d)寒天ブロックのダミー餌との接触,e)アブラムシの体液をつけたダミー餌の摂食の5種の刺激のいずれかを与えてGUTを測定し,刺激を与えなかった場合のGUTと比較した。GUTは,上記5種のどの刺激を与えた場合にも刺激を与えなかった場合より長く,a≈d<b<e<cの順で長くなった。探索行動の切換えは,餌を摂食しなくても餌と接触するだけでもひきおこされると考えられる。
また,GUTは,餌を摂食するのに要する時間が長いほど長かった。餌の摂食時間は餌の大きさと直線関係があるので,摂食した餌が大きいほどGUTは長くなると考えられる。大きさの異なるアブラムシを2頭連続して摂食させた場合,GUTは,1頭目に大きい餌を摂食したときよりも2頭目に大きい餌を摂食したときのほうが有意に長かった。したがって,GUTの長さは総摂食量が同じ場合,あとのほうの餌の大きさによって決定されていると考えられる。