分析化学
Print ISSN : 0525-1931
植物試料の乾式灰化に伴う元素の損失
野中 信博樋口 英雄浜口 博戸村 健児
著者情報
ジャーナル フリー

1981 年 30 巻 9 号 p. 599-604

詳細
抄録

植物標準試料Orchard leaves(NBS),並びにササ(環境科学特別研究,木羽班調製)を乾式灰化する際に,これら試料に含まれる26元素の損失率を原子吸光法,並びに中性子放射化分析法により調べた.
植物試料約30gを高純度石英ざら並びに白金ざらにそれぞれ取り,均一に広げ,110℃で24時間乾燥した後,200℃,300℃,450℃,600℃,800℃でそれぞれ24時間灰化を行い分析に供した.
分析結果から,ナトリウム,カリウム,ルビジウム,セシウムなどのアルカリ金属については,灰化容器,植物試料の種類の違いにより損失率が大幅に異なり,特に石英容器での灰化はアルカリ金属の損失の主な原因となることが明らかとなった.水銀については110℃より,又塩素,臭素,セレン,クロム(Orchard leavesのみ)については,200℃で急速に損失しその後450℃まで温度の上昇にもかかわらず損失率は増加しないで500℃以上で再び損失するパターンを示した.水銀については,温度上昇とともに損失は連続的に増加した.ヒ素,アンチモンについては,200℃で損失が認められ,以後温度上昇にかかわらず損失率は一定の値を示した.その他,銅,トリウムについては600℃以上で損失がみられたが,アルカリ土類,希土類元素,バナジウム,マンガン,鉄,コバルト,亜鉛,アルミニウムについては揮散又は灰化容器との融化による損失は認められなかった.

著者関連情報
© The Japan Society for Analytical Chemistry
前の記事 次の記事
feedback
Top