分析化学
Print ISSN : 0525-1931
植物標準試料Orchard Levesの乾式灰化に伴う元素の損失
加熱温度及び加熱時間と元素の損失との関係
野中 信博樋口 英雄浜口 博戸村 健児
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1985 年 34 巻 6 号 p. 360-364

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抄録

植物標準試料Orchard Leaves(NBS)を乾式灰化する際に,試料に含まれる23元素の損失率を中性子放射化分析法により調べた.植物試料約30gを高純度石英皿に量り取り,均一に広げ,200,450,800℃における加熱時間を5,10,15,20,24時間と変化させて灰化を行い分析に供した.分析結果から,ナトリウム,カリウム,ルビジウム,セシウムなどのアルカリ金属については,200℃では,加熱時間の増加にかかわらず損失は認められず,450℃,800℃では5~15時間で損失し,以後加熱時間の増加にもかかわらず一定の値を示した.ただしセシウムは800℃では,5時間で100%損失した.又各元素の損失率の割合は,セシウム>ルビジウム>カリウム>ナトリウムの順に変化した.ヒ素,臭素,塩素,クロム,アンチモンについては,各加熱温度とも5時間で損失し,以後加熱時間の増加にもかかわらず損失率はほぼ一定の値を示した.又臭素,アンチモンの損失率は,200℃>450℃であり特異的なパターンを示した.水銀,セレンについては,各加熱温度の5時間で急速に損失し,以後は加熱時間増加とともに損失は連続的に増加した.ただ水銀は450℃,800℃とも,5時間で100%損失した。アルカリ土類,希土類元素,マンガン,鉄,コバルト,亜鉛,アルミニウムについては,損失は認められなかった.

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© The Japan Society for Analytical Chemistry
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