高齢期での自立生活の維持を考える上で,低栄養を背景とする虚弱及びその根底をなす筋肉減弱(サルコペニア)という大きな問題があり,高齢者における食の安定性を改めて再考する必要がある.我々は高齢者の『食力』に焦点を当て,食環境および口腔機能の悪化から始まる筋肉減少を経て最終的に生活機能障害に至る構造を新概念として構築している.早期の段階から軽微な口腔機能(=新概念「オーラル・フレイル」として提唱)や栄養状態の低下も認められ,さらに社会性の虚弱(social frailty)も深く関わっている.病態が顕在化するよりも早期の段階から介入すべきであるが,そのためには今まで以上に医科歯科協働を強め,「しっかり噛んで,しっかり食べ,しっかり動く,そして社会参加を」というメッセージを発信し,国民運動論に引っ張り上げることが求められている.