2009 年 65 巻 3 号 p. 217-230
本論文は,高度に市街化が進行した都市中小河川における実時間洪水予測に適した集中型概念モデルの精度向上に向けて,合流式下水道による流域外への排水など都市特有の流出機構を考慮し,また全流出成分を概念的に組み込むことで有効雨量の算定や流出成分の分離作業が不要となる新たな都市貯留関数モデルを提案したものである.本提案モデルを,東京都の代表的都市中小河川である神田川上流域を対象に,近年観測された豪雨9イベントに適用し,観測ハイドログラフに対する再現性を検証した.その結果,従来の貯留関数モデルと比べパラメータ数は2つ多くなるものの,流出ハイドログラフの予測精度が格段に向上し,ピーク流量や総流出量を的確に捉えられること,他降雨イベントに対するパラメータの安定性や適応性が向上することを確認した.