2010 年 66 巻 4 号 p. 434-443
津波による樹林帯破壊が,熱帯地域で防潮林として期待されているアダン樹林帯背後における津波力低減効果に与える感度を,破壊の有無と樹林帯幅に注目して定量的に評価した.算定した破壊限界値は,2m以上の樹木に対し樹高の8割を津波浸水深がこえた場合に破壊されるという既往知見を概ね満足していた.また,樹林帯幅が厚くなると樹林帯全体としての反射の影響で破壊限界値は大きくなった.樹高が 2,4mの場合は,樹林帯の前面部が破壊されると,樹林帯全部の破壊につながりやすい.樹高が 6m,8mの場合は途中で破壊が止まり,高い津波減衰効果を維持可能である.気根上部が破壊されても,気根のみによる津波力低減効果は大きいが,潜在的津波力減衰率の評価値に対し樹高2,4mの場合で2割程度,樹高6,8mで1割程度の影響を与える.