木材学会誌
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一般論文
古材の強度特性 (第3報)
ケヤキおよびアカマツの静的曲げ強度特性および衝撃曲げ強さ
平嶋 義彦杉原 未奈佐々木 康寿安藤 幸世山崎 真理子
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2005 年 51 巻 3 号 p. 146-152

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抄録

建築解体材より採取した古材の無欠点小試片を用いた試験から静的曲げ強さ (MOR), 曲げヤング係数 (MOE), 衝撃曲げ強さを求めこれを新材の値と比較した。供試古材は建築後255年経過したケヤキ, 115年 (静的曲げ試験のみ), 270年および290年経過したアカマツである。新材と比較対照古材の密度の分布を合致させたうえでそれぞれの強度特性を比較するためモンテカルロシミュレーションを行った。シミュレーションで得られた新材の値と古材の値との比較から次のことが明らかになった。MOR, MOEはケヤキ古材では新材よりそれぞれ16.3%および14.8%減少し, アカマツ115年経過材では有意差はなく, 270年および290年経過したアカマツではいずれも増加した。増加率はそれぞれMOR : 17.3, 10.8%, MOE : 42.1, 26.8%であった。衝撃曲げ強さはケヤキ, アカマツとも古材は新材より減少した。その減少率はケヤキ : 15.2%, アカマツ270年および290年経過材 : 27.1%, 22.1%であった。静的曲げ試験における比例限度応力の最大応力に対する比を古材と新材で比較すると, ケヤキでは有意差はなく, アカマツでは古材の値は増加しその増加率は14.1~31.9%であった。本研究の一連の実験結果を眺めるとアカマツ古材は新材に比べて強度増加を示すもの (圧縮, 静的曲げ, せん断) もあるが, 同時に脆性的性質を帯びているように見受けられ, この性質は, 破断面の長手方向に及ぶ長さの減少 (引張), 比例限度比の増加 (圧縮, 静的曲げ) および強度減少 (引張, 衝撃曲げ) などとして現れていると考えられる。

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© 2005 一般社団法人 日本木材学会
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