2016 年 62 巻 3 号 p. 61-66
成長に伴うモウソウチクの力学的性質の変化に関わる因子を明らかにするために,発筍から40日~9年が経過した竹稈から採取した飽水状態の竹材を用いて,内皮側もしくは外皮側から負荷した際の曲げ弾性率を測定した。また,弾性率に影響を与えると考えられる容積密度,柔細胞および繊維細胞の細胞壁厚,柔組織および維管束鞘の細胞壁率を,内皮側と外皮側で測定し,曲げ弾性率とこれらの関係を検討した。その結果,竹齢の増加に伴う曲げ弾性率の増加は,材全体の密度増加のみでは説明できず,細胞壁実質が増加する細胞の種類や存在位置によって寄与の大きさが異なることが明らかとなった。また,内皮側負荷時の曲げ弾性率には柔細胞の細胞壁厚や壁率が,外皮側負荷時には繊維細胞の壁厚や壁率が,より大きく関与することが示された。