園芸学会雑誌
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メロン果実への光合成産物の転流•分配に及ぼす葉位および灌水量の影響
宍戸 良洋湯橋 勤施山 紀男今田 成雄
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1992 年 60 巻 4 号 p. 897-903

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抄録

メロンにおいて,葉位および灌水量の違いが光合成産物の転流•分配に及ぼす影響を調査した.
1.メロン果実の肥大は収穫期まで持続し,果実以外の部位の乾物重の増加はほとんど認められなかった.すなわち,これらの期間,果実は果実着生節葉に対するメイン•シンクとなっていた.
2.果実への光合成産物の蓄積に対する各葉位葉の役割を見ると,交配後43日では,着果側枝上の葉の転流率および果実への分配率が最も高く,次いでその着果側枝着生節の葉で高くなっており,果実近辺の葉の果実肥大への寄与が高いものと推定された.また,果実から離れた葉でも光合成産物の分配は主に果実へ行われているが,根や茎などへも行われ,植物体各部位の生長および維持に対する葉位間の役割分担の存在が認められた.
3.収穫前20日から,乾燥区ではpF2.3のときに300ml,標準区ではpF1.8のときに600mlおよび多湿区ではpF1.5のときに800mlずつ灌水してポットの水分状態を変えた場合,乾燥区と標準区では処理10日後に処理直前と比べ転流率の増加が認められ,その後低下した.多湿区では転流率の増加が他の2区より遅れることが認められた.これらの変化は必ずしも植物体の水分状態が直接的に転流に影響を及ぼすのではなく,水分ストレスによって果実の成熟が促進され,果実のシンクとしての活性が変化したことに対応したものと推定された.
4.灌水処理は果実への光合成産物の分配には大きな影響は及ぼさず,果実への分配率は各区ともほぼ90%前後で推移していることが認められた。

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