紙パ技協誌
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研究報文
塗工紙の印刷網点部で発生するモットリングの要因解析
―光学的ドットゲインのムラの影響―
河崎 雅行石崎 雅也吉本 孝士
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2009 年 63 巻 11 号 p. 1362-1373

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抄録

塗工紙のオフセット印刷物の品質問題の一つにモットリング(印刷濃度の濃淡ムラ[不均一性])があり,紙要因として表面粗さ(表面凹凸のムラ),インキ(ビヒクル)や湿し水の吸収ムラ,地合い等に由来する紙厚のムラなどが知られている。市販塗工紙を調査した結果,網点部で発生したモットリングの要因はインキの転移ムラで概ね説明できたが,一部の試料ではインキの転移ムラが小さくてもモットリングが劣る場合が見られた。そこで塗工紙の更なる品質向上に役立てることを目的として,その要因や発生メカニズムを解明する検討を行った。
光学顕微鏡を用いてモットリングの濃部と淡部を詳細に観察した。印刷濃度に影響する要因には,網点部ではインキ皮膜の面積に関係する機械的ドットゲイン(実際の網点太り)に加え,光学的ドットゲイン(見かけの網点太り)もあり,これには印刷媒体の面内方向(X―Y方向)の光拡散が影響する。そこで,印刷した罫線の微小濃度プロファイルを測定し,モットリングの濃部と淡部の光拡散の違いを調べた。またモットリング,紙の面内方向の光拡散ムラ,塗料による原紙の被覆ムラそれぞれを数値化し,それらの関係を定量的に調査した。
その結果,網点部のモットリングにはインキの転移ムラに加えて,光学的ドットゲインのムラも影響することがわかった。特にA2グロス調コート紙に標準的な条件で印刷され,網点の形状が概ね均一である場合に発生するモットリングに関しては,光学的ドットゲインのムラが大きく影響すると考えられた。光学的ドットゲインのムラは紙の面内方向の光拡散ムラに起因することがわかった。紙の面内方向の光拡散ムラの要因は,塗料による原紙の被覆ムラ,塗工顔料と原紙のパルプ繊維の光拡散の違いなどであると考えられた。モットリング対策の一つとして塗料による原紙の被覆ムラを抑制することは,インキの転移ムラに加えて光学的ドットゲインのムラを小さくする観点からも重要であると考えられた。

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© 2009 紙パルプ技術協会
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