紙パ技協誌
Online ISSN : 1881-1000
Print ISSN : 0022-815X
ISSN-L : 0022-815X
研究報文
製紙スラッジ焼却灰(PS ash)を原料として合成されたハイドロキシアパタイトのアルブミン及びオレイン酸吸着能
福垣 内暁松枝 直人逸見 彰男
著者情報
ジャーナル フリー

2009 年 63 巻 12 号 p. 1496-1505

詳細
抄録

炭酸カルシウムを60wt%含有するPS ashを原料として,ハイドロキシアパタイト―ゼオライト複合体及び高純度ハイドロキシアパタイトの合成を試みた。電子顕微鏡観察の結果,得られたハイドロキシアパタイトは,50nm以下のナノ粒子であった。各試料について,アルブミン及びオレイン酸吸着試験を実施した。ハイドロキシアパタイト―ゼオライト複合体及び高純度ハイドロキシアパタイトには,アルブミンの吸着能は見られなかったが,これらの試料をカルシウム洗浄した試料にはアルブミン吸着能があり,市販ハイドロキシアパタイトと同等かそれ以上の吸着能を有していた。カルシウム洗浄することでアルブミン吸着能が大きくなる現象を解明するために,比表面積測定及びCa/Pモル比測定を行い検証した結果,カルシウム洗浄することで,Ca/Pモル比を高めることができることと,アルブミンの吸着能は,比表面積の違いよりも,Ca/Pモル比が1.67(ハイドロキシアパタイトの理論比)に近づくと大きくなる結果を得た。オレイン酸吸着試験を行った結果,市販ハイドロキシアパタイトは,オレイン酸吸着能を有していなかったが,PS ashから得られたハイドロキシアパタイト―ゼオライト複合体及び高純度ハイドロキシアパタイトは吸着能を有していた。特に,高純度ハイドロキシアパタイトは,投入されたオレイン酸の70%を吸着した。これは,比表面積の違いが吸着能に影響したと考えられた。

著者関連情報
© 2009 紙パルプ技術協会
前の記事 次の記事
feedback
Top