Journal of Computer Aided Chemistry
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分子性結晶構造解析のための結晶計算法の並列化
小畑 繁昭後藤 仁志
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2008 年 9 巻 p. 8-16

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抄録

計算化学技術による結晶構造解析は、機能材料や医薬品の開発など広範囲な研究分野において重要な役割が期待されている。一般に結晶計算では、計算対象となる結晶モデルを大きくするとより実在系に近づき、より高精度な計算結果を期待できるが、それに伴う分子間相互作用の計算量は爆発的に増加する。このため、利用可能な計算機の演算性能に応じて計算できる結晶モデルの大きさは制限されてしまう。そこで本研究では、我々が開発してきた結晶構造最適化プログラムKESSHOUの結晶計算法を、汎用分子計算プログラムCONFLEXに導入したCONFLEX/KESSHOUにおいて、分子間相互作用の計算部分に並列分散処理技術を適用することによって、結晶構造のエネルギー計算や構造最適化の効率的な高速化を実現した。また、結晶モデルの大規模化に伴う分子間相互作用エネルギーの加算誤差を最小限に抑えるため、Kahanの加算アルゴリズムを適用した。並列分散計算環境を利用して、アスピリン結晶の構造最適化を行なったところ、その並列化効率が90%以上に達することを確認した。また、結晶モデルの大きさ(有効結晶半径)に依存した結晶エネルギー揺らぎを調べたところ、有効結晶半径80A以上の結晶モデルの結晶エネルギーは10-3 kcal/mol以内の精度で求められることが分かった。

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© 2008 日本化学会
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