水文・水資源学会誌
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積雪のある森林域における分光反射特性と植生・積雪指標
斎藤 篤思山崎 剛
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1999 年 12 巻 1 号 p. 28-38

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抄録

地表面の熱収支・水収支にとって重要な要素である積雪と植生について,分光反射特性を調べ,その特徴を用いて植生密度の分類や積雪のあるなしといったことの判別法を検討した.分光反射特性の測定は,とくに高緯度地域における積雪のある森林域を念頭におき,可搬のポット苗を用いることで植生密度や林床の積雪の有無などの条件を変えて行った.複数の要素が混在する地表面の分光反射特性を再現できる簡便なモデルを検討し,正確な再現には林内の多重散乱を考慮する必要があることがわかった.次に以上の結果を応用することで,リモートセンシングにより植生の状態を知るための植生指標と積雪の有無を判別できる積雪指標を提案した.これまでの代表的な植生指標は,可視・近赤外波長域のそれぞれについて1波長帯を使い,植生の活性度などを見積もる指標であったが,林床の地表面の影響が無視できない場合,土壌の種類により同じ植生でも指標が異なり,とくに地表面が積雪の場合には誤って植生を見積もってしまっていた.今回提案する可視1波長帯・近赤外2波長帯域で計3波長帯の測定値を使用する植生指標では,葉面積指数LAIが3m2m-2未満の植生について,土壌の種類や積雪などの地表面要素によらずLAIのみで決まることから,植生密度を判定できることを確かめた.また,積雪指標でも同様にLAIが3m2m-2未満の植生について,林床の積雪の有無が判別できるという結果を得た.

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