日本地すべり学会誌
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論文
阿蘇火山の降下テフラ被覆斜面における豪雨による斜面崩壊の発生場の地形条件
檜垣 大助李 学強林 郁真鄒 青穎木村 誇林 信太郎佐藤 剛後藤 聡
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2019 年 56 巻 Special_Issue 号 p. 218-226

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抄録

 西南日本, 九州中部にある阿蘇火山の斜面では1990, 2001, 2012年の豪雨で多数の浅層崩壊が発生した。本論文は, 同火山の高岳地区, 妻子ヶ鼻地区で, それら崩壊の分布のGIS解析と発生域の地形分類から, 集中的な崩壊発生の地形的原因を把握することを目的とした。3時期の崩壊について崩壊源を航空レーザ測量による1m DEMから作成した赤色立体地図上にマッピングした。崩壊のほとんどが傾斜25°以上, 50m×50m窓の範囲での起伏量20m以上で発生していたが, これらはそれぞれ豪雨時の崩壊発生下限勾配と不安定化した土層の崩落しうる比高を表している。両地域で, 2012年崩壊の半数以上が1990, 2001年崩壊と離れた所に発生し, 同様に2001年崩壊の半数以上が1990年崩壊と離れた所に発生していた。2012年崩壊は, 2001年及び1990年の崩壊の隣接背後と隣接横で, それぞれ高岳地区で32.7%, 21.2%, 妻子ヶ鼻地区でそれぞれ19.1%, 28.4%の割合で発生した。対照的に, 崩壊地の内部では, 2012年, 2001年の崩壊が, 高岳でそれぞれ3―4%, 妻子が鼻で1―7%の発生と少なかった。阿蘇火山では, 崩壊跡地形の調査域に占める面積割合は約50%に達することから, 浅層崩壊が頻繁に起こってきたと言える。微地形分類図による2012年の崩壊発生源と崩壊跡地形 (以下 : 跡地形) との位置関係は, 1) 跡地形隣接背後, 2) 跡地形隣接横, 3) 崩土を伴わない崩壊跡地形の中, 4) 崩壊跡地形下方, 5) 崩壊跡地形の崩土とその周囲, 6) 遷急線下の谷壁斜面, 7) 独立, に分けられる。その中でタイプ1) がとくに多く2), 3) の発生がやや多い。崩壊跡地形との関係では, 2012年の崩壊がタイプ1), 2), 3) で多かったのに対し, 2001年, 2012年の崩壊が, それぞれ前回 (1990年), 前々回 (1990年) と前回 (2001年) の崩壊地の内部で起こった割合が小さかったのは, 長期的な崩土上への降下テフラの堆積や跡地形滑落崖からの匍行物質堆積とそれによるすべり面上の土層厚さの増加が理由とみられる。また, タイプ1), 2) が多く, 前回崩壊で隣接背後・横の発生が多かったのは, 斜面末端部でのバランス減少が原因である。以上から, 豪雨による崩壊発生危険斜面の把握可能性についても述べた。

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