平成24年 (2012年) 7月九州北部豪雨で表層崩壊が多発した阿蘇カルデラ北東部地域において, 阿蘇火山の噴火史研究に基づくアイソパックマップからスプライン法を用いて潜在すべり面までのテフラ層厚分布を推定し, 現地の11地点で実測した層厚と比較したところ, 推定層厚と実測層厚との比であるテフラの残存率 (Rr) は0.12~0.31の範囲にあって, 傾斜角や曲率の増加に伴って減少する傾向がみられた。こうした層厚分布の特徴を考慮した無限長斜面の斜面安定解析を行うことで, 2012年7月豪雨で発生した崩壊地 (頭部滑落崖309箇所) の最大約84%を捕捉することができ, 本手法で算出した安全率 (Fs) の確からしさが示された。一方で, Fsが1.00を下回る斜面領域すべてを崩壊危険地として抽出すると, その面積割合は解析対象範囲の約67%となり, 1回の豪雨で発生する崩壊地の面積割合 (約4~15%) と比べて過大な抽出結果になることも明らかになった。