日本LCA学会誌
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解説
ライフサイクルアセスメントのための農薬排出の定量化:グローバルコンセンサスの形成過程
Peter FANTKEAssumpció ANTÓNTim GRANT林 清忠
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2017 年 13 巻 3 号 p. 245-251

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抄録

推奨される農薬排出割合に関する合意を形成し、LCAにおけるデフォールト値を作成しようとする国際的取組みが開始された。評価フレームワークに関する合意内容は以下の通りである。(a)1次的分布(散布直後の排出)がライフサイクル影響評価(LCIA)のインプットとして使われる。(b)フレームワークならびにLCAでの利用のためのガイドラインとドキュメントが作成される。(c)排出フレームワークは既往の排出モデルの修正に基づく。(d)ドリフトの値は、専門のモデル作成者から提供される。(e)農薬散布シナリオは熱帯地域を対象として含む。(f)気象、土壌、農薬散布方法に関するシナリオは、感度分析に基づく。(g)デフォールトの排出割合の推定は、農薬生産量を用いた加重平均による。(h)排出割合は地理的および行政的空間ごとに示される。これらの合意に基づく推奨内容は以下の通りである。(a)LCAを実施する際には、農地がテクノスフェアとエコスフェアのどちらに属するかを表明すべきである。(b)農地への散布量等は、農薬排出の定量化のためのインベントリの一部として報告する必要がある。(c)農薬の1次的分布と2次的分布(運命分析の対象となる長期的視点からの排出)の双方を報告すべきである。(d)LCIAは、農地をテクノスフェアとする場合とエコスフェアとする場合の双方に対応すべきである。(e)LCIAは、作物吸収を含む運命・暴露の全体を対象とすべきである。(f)詳細なシナリオが得られない場合には、排出のデフォールト値を使用すべきである。(g)すべての仮定を報告すべきである。

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© 2017 日本LCA学会
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