1998 年 59 巻 1 号 p. 53-68
琵琶湖北湖湖水および流入河川水を対象として,疎水性―親水性,酸性―塩基性の違いに基づいた溶存有機炭素(DOC)分画手法を適用し,湖水および河川水溶存有機物の特性や起源について検討した。湖水と河川水,および流域特性の異なる河川水ではDOC分画分布および紫外部吸光度(UV):DOC比に有意な違いが認められた。
琵琶湖北湖湖水および流入河川水ともに,DOC成分として有機酸(疎水性酸(フミン物質)+親水性酸)が卓越していた。湖水では親水性酸(フミン物質:25-27%,0.37-0.41mg Cl-1;親水性酸:40-48%,0.58-0.78mg Cl-1),河川水ではフミン物質が優占した(フミン物質:37-73%,0.32-0.71mg Cl-1;親水性酸:23-35%,0.11-0.45mg Cl-1)。特に,森林自然系河川でフミン物質の存在比が最大となった。湖水のUV:DOC比は親水性酸,湖水DOC,フミン物質の順に高くなった。湖水DOCおよび湖水フミン物質のUV:DOC比は既報の藻類由来とする値とほぼ同じ低い値を示し,琵琶湖北湖水中の溶存有機物は主に藻類由来ではないかと推測された。河川水DOCのUV:DOC比は湖水よりも約60%高く,土壌由来DOCの影響が大きいと考えられた。しかしながら,分離された河川水フミン物質のUV:DOC比は河川水フミン物質としてはかなり低く,湖水フミン物質のUV:DOC比より顕著に高いものではなかった。特に都市系河川のフミン物質のUV:DOC比は湖水フミン物質より低かった。