陸水学雑誌
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中海・宍道湖における魚類および甲殻類相の変動
石飛 裕平塚 純一桑原 弘道山室 真澄
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2000 年 61 巻 2 号 p. 129-146

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抄録

中海と宍道湖において1995年4月から1997年3月までの毎月1回小型定置網による漁獲調査を行なった。2年間に中海(本庄水域を除く)と宍道湖でそれぞれ69種と65種の魚類が確認された。それぞれの観測点の魚類と甲殻類の出現・成長パターンは毎年類似していたが,各種の漁獲量はこの2年間でも大きく変動した。漁獲量のなかで統計にあがらない非有用魚種の占める割合が大きいことが判明した。
中海での確認魚種は宮地(1962)の103種に比べ著しく減少した。中海西部では,暖候期の下層水の貧酸素化が甲殻類の生育に影響を及ぼし,冬季のワカサギHypomesus transpacificus nipponensisの漁獲がほとんどなくなっていた。干拓事業による閉鎖性の増大と富栄養化による水質悪化のために,中海の漁業環境は悪化していることが示唆された。宍道湖における主要魚種の現存量を,宮地(1962)の方法と今回の結果から推定した。富栄養化の進行のなかで,宍道湖は依然として高い魚類生産性を示していたが,その構成魚種は大きく変化した。

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