本稿は,国勢調査の小地域集計結果の分析から,1990年代後半の東京都心部の人口回復に寄与した住民の特性ならびに人口増加地区における住民構成の変化を明らかにした.その結果,この時期にアフォーダビリティに関して多様な条件の住宅が供給された東京では,特定の属性の住民のみが都心居住を可能にしたわけではなく,特定の町丁へ転入した住民は,家族構成と社会階層に応じて居住地・住宅を選択していた.このことは,都心部の居住地構造にミクロスケールの量的・質的変化を生じさせ,短期間にその不均一性を高めたと考えられる.この不均一性の高まりに伴い発現する都市の新たな現象や社会問題の解明に取り組むことが今後の課題である.