2000 年 41 巻 2 号 p. 142-146
構音を評価する手段としては数種類のものが存在するが, 生理学的手法や音響学的手法と並んで聴覚印象に基づく評価を中心とした構音検査は臨床的には最も多く用いられる検査法である.それは, この検査法によって被験者の構音の特徴が比較的簡便かつ系統的に把握できるからであろう.多くの臨床家に有用性を認められている構音検査について, 他の評価手段として検討すると, 簡便で実際的だという長所がある一方で, (1) 聴覚印象評価は検査者の主観に基づいた記述であり, 検査の信頼性に疑問が残る, (2) 構音の特徴抽出に限界があるという大きい問題点が認められる.聴覚的評価の精度と信頼性を高めるためには, 検査者の専門的知識と技能の保証と, 構音についての広く深い理解が必要であろう.