地質学雑誌
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論説
中央構造線の脆性変形の最古の記録:三重県多気地域のシュードタキライトのフィッショントラック年代
高木 秀雄島田 耕史岩野 英樹檀原 徹
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2010 年 116 巻 1 号 p. 45-50

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抄録

三重県多気町の中央構造線(MTL)に伴われるシュードタキライト(PST)のフィッショントラック(FT)年代を報告し,MTLの活動史を議論した.PST脈のジルコンFT年代は 60.0±3.5 Maであった.一方,PSTから10 cmおよび15 mはなれた畑井トーナル岩由来のマイロナイトは,3試料の重み付き平均値として69.8±1.2 MaというPSTよりも有意に古い値が得られた.PSTに観察される長石の分解組織はジルコン内の既存のトラックを瞬間に消滅させるに充分な温度に達したことを示唆し,PSTのトラック長解析はそのFT年代が摩擦熱融解時に完全にアニールされたことを示す.一方,母岩の燐灰石のFT年代が38.0±1.5 Maであることから,母岩の冷却時の250~100℃の条件でPSTが生成したことが明らかとなった.今回の約60 Maという年代は,MTLの断層ガウジの最古の年代と一致する.

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© 2010 日本地質学会
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