日本看護科学会誌
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研究報告
高齢者の終末期の意思把握としての回想の可能性
小楠 範子
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2008 年 28 巻 2 号 p. 2_46-2_54

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抄録

本研究の目的は,回想を聴くことで高齢者の終末期の意思がどのような形で表出されていくのかに焦点を当て記述することである.研究参加者は,A特別養護老人ホームの5名の女性高齢者である.研究者は,研究参加者と1人当たり3回,回想を中心とした対話を行った.
対話記録を分析した結果,家族,特に“子ども”をキーワードに人生を回想する高齢者の姿が見えてきた.そして,それぞれのテーマで人生を回想した後,高齢者はごく自然に自分の人生の終わりについても語ることが明らかとなった.高齢者の語りからは,食べられなくなった時を死が近いサインとして,静かに受け止めようとしている姿がみえてきた.高齢者はまた,最期まで“ひと”とのつながりを求めていることが明らかとなった.
回想を中心とした対話それ自体に高齢者の存在を自他ともに認めるケアの側面があり,そこにはその高齢者なりの最期までの生き方の望みが表現され得ることが示された.

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© 2008 公益社団法人 日本看護科学学会
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