海の研究
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洞海湾と博多湾の富栄養化機構の比較
柳 哲雄山田 真知子中嶋 雅孝
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2001 年 10 巻 4 号 p. 275-283

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抄録

狭く深い洞海湾と広く浅い博多湾の富栄養化機構の相違を, 両湾における夏季の塩分・全リン(TP)・全窒素 (TN) の濃度観測結果をもとに考察する。狭く深い洞海湾では有光層で粒子化され, 無光層に沈降したリンや窒素が, 河口循環流により湾奥に戻されながら, 分解されて栄養塩に回帰し, 有光層に湧昇して, 再び光合成に用いられるという循環を繰り返す。一方広く浅い博多湾では河口循環流が洞海湾ほど発達しないために, 無光層に沈降したリンや窒素が淡水とほぼ同様に輸送される。その結果, 洞海湾におけるTP, TNの平均滞留時間は, 淡水のそれの約2倍ほど長くなるが, 博多湾のTP, TNの平均滞留時間は淡水のそれとほぼ等しくなる。このことは, 狭く深い洞海湾は淡水の平均滞留時間は短いものの, 栄養物質の平均滞留時間は長くなり, 富栄養化されやすいことを示している。

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